「ゲーミングオーディオ」という表現は、オーディオマニアが嫌がる劣化した音質や低音一辺倒の音声を指す事が多く、不適切な使い方や誤解に基づくネガティブなイメージがつきまといます。このようなイメージはどのようにして築かれたのでしょうか。ゲーミング用ヘッドセットのメーカーはこれまで、ゲーム内での武器や車両の音を際立たせるため、ゲーミングヘッドセットの低音レスポンスを過剰に拡大してきました。しかし、今日のゲームのサウンドデザインは、一流の映画やミュージカルにもひけをとらないほど複雑です。ゲーム内の武器はさまざまな特性を表すように描かれており、音の高低も武器によって異なります。さらに、ボーカルや音楽、環境の音声キューなど、ゲーマーがプレイの上で考慮すべき要素がたくさんあります。効果的にゲームをプレイするには、正しく音響をの解釈することが不可欠です。
優れたゲーミングオーディオ設計に必要な科学は、まずはさらなるパワフルさと深い低音を生み出せる 50 mm ドライバーを厳選し、微調整することから始まります。このドライバーが発する超ワイドな周波数帯があってこそ、音を耳で聞き、そして感じる、没入感のある体験が作り出されるのです。超大型振動板 (ダイヤフラム) が強烈な低音に必要な空気量を動かし、微調整されたボイスコイルがその空気を自由に動かすことで、明瞭かつ高いの周波数を届けることが可能になります。
しかし何よりも重要なのは、周波数特性カーブを微調整。当社製のドライバをゲーミング向けに微調整する作業は、人気ゲーム中の重要な効果音を選び、その周波数帯を測定するという、重要なプロセスです。それでは、その最も重要な音声キューとは何でしょうか。当社ではディスプレイを切った状態でゲームをプレイし、各キャラクターのスキルが聞き分けられるか、銃撃音だけで武器の種類を特定できるか、そして何よりも足音の方向と距離を推測できるかという作業を行い、
次にそれらの音だけを際立たせるように、ゲーミングオーディオを調整しました。
さらに位置オーディオを強化するため、Xbox One と PlayStation 4 にも対応した世界で最も人気のある仮想 7.1 サラウンドサウンド技術「Dolby Headphone テクノロジー」を導入しています。
ゲーミングオーディオのもう一つ重要な要素がマイクです。優れたマイクがなければチーム対戦ゲームが悪夢となり、チームメートにも冷たい視線を向けられます。
いかに生声に近く自然な声を送れるかは、マイクが集音する周波数の量によって左右されます。幅広い範囲の周波数であれば、声の重要な部分だけでなく、あなたらしい声を作り出す中音や低音も正確にとらえてくれます。例えば、一般的に使われている電話の通話で使用できる声の周波数帯は 300Hz から 3,400Hz です。Razer Thresher Ultimate なら 100~10,000Hz の音を拾うことができ、あなたの生声に非常に近い音源を作り出すことが可能です。
次に問題となったのが、ECM (エレクトレット式マイク) と MEMS (マイクロ・エレクトリカル・メカニカル・システム) のどちらを選ぶかでした。Razer Thresher Ultimate では MEMS 方式マイクを採用しています。ECM の方がコストが安いのですが、当社設計の製品は価格ではなく性能で勝負することを目的としているため、MEMS 方式に多くのメリットがあります。具体的には次のようなメリットです。
より高密度で性能を発揮するため、ECM に比べてサイズの削減が可能
温度変化や振動による影響が比較的低い
性能面での個体差がほとんどなく、より安定した体験を提供できる
ゲーミングヘッドセットの設計において当社で特に注目する主な要素が、感度と集音パターンです。「感度」はどれほど離れた場所からマイクが音源を拾えるかに関係します。「集音パターン」は、単一指向性の場合は一方向に円柱状に広がり、全指向性の場合はその周囲全域に広がります。Razer Thresher Ultimate では不要な音源からのノイズを拾うのを避けるために単一指向性のブーム型マイクを採用。またマイクの感度を、普通の会話程度の音量を集音できるブーム部分とユーザーの最大距離に設定しています。
使い心地もまた注力すべき要素です。私達ゲーマーは何時間でもゲームにのめり込めますが、不快感はたやすくその楽しさの邪魔をしてきます。使い心地の大部分は、素材の選択と機械設計によって決まります。着用者の頭部と耳の形による主観的なものであると同時に、さまざまな外部的要因(温度、湿度、ノイズ、さらにはストレス度合など)によって影響されます。当社ではどのような状況でも使い心地の良さを味わえるよう、プロゲーマーとカジュアルゲーマーのどちらのケースにも対応した幅広いストレステストを行っています。
まずは重量。第一の目的は、不要な部品を最小限にとどめ、効率的なデザインを作り出し、軽量素材を使用することでできるだけ重量を減らすことです。Razer Thresher Ultimate の場合、重さは 402 グラムとなります。しかし、ヘッドセットは頭の上に乗せているだけではありません。適切な力で頭を鋏むことで、重量をより広い面積に分散させることができます。
当社のエンジニアはさまざまなテストを通じ、力と重量がヘッドバンドおよびイヤークッション全体に均等に分散するよう調整を行い、頭の特定部分に圧力ができるだけ集中しないように設計しました。
使い心地の良さにはフィット感が必須。ワンサイズでは誰にでも合うわけではありません。そこで、人それぞれの頭の大きさに合わせてヘッドセットを調節できることが重要となります。抜群のフィット感を実現するため、Razer Thresher Ultimate には調節可能なパーツが、高さを変更できるヘッドバンド、さまざまな頭の形に合わせて旋回したり前後に動いたりする左右のイヤークッションの計 3 つ存在します。
しかし、可動パーツは機械設計の耐久性を損なう可能性があります。そのため、重要な可動パーツが複数ある場合、そのパーツを分散させることで、故障のリスクを抑えることができます。特に、戦いに熱中すると周辺機器を手荒く扱ってしまうこともあるからです。Razer Thresher Ultimate のデュアル ヘッドバンド設計は、可動パーツをヘッドセットの各部に分散させることで、最大限の耐久性を確保しつつ、各パーツの調整機能を完全に実現しています。
最後に、素材の選択が、そのどちらにも影響する要素となります。ヘッドバンドにはステンレス鋼 301 を使用することで、日々の損傷に耐えうる頑丈さと耐腐食性を実現。レザーレットを使用した形状記憶フォーム製ヘッドバンドには頭の側に通気性のある生地を使用しているため、熱がこもるのを防ぎ、触り心地も滑らかです。
Razer Thresher Ultimate では、イヤークッション自体も2 種類のうちのいずれかを選ぶことができます。ひとつは、できる限り遮音性を確保することで最高のパフォーマンスを引き出す、レザーレットを使用したシンプルなイヤークッション。もうひとつは、遮音性や音声と引き換えに長時間の快適なゲーミングを可能とする、冷却ジェルをしみ込ませた布製のイヤークッションです。ユーザー自身のニーズに応じて選択できます。
またいずれのオプションでも、眼鏡をかけていても快適に使えるよう、クッション部分にはくぼみがあります。